気持ちいい関係。

  top


01.くーちゃん、活動する。


くーちゃんと書いて肉食女子と読む。
美味しい関係。過去拍手小話NO.06くーの受難より。
再録です。
一部内容は変わっています。



どんな手を使っても落ちない相手。
杏にとって難攻不落な男は今まで存在しなかった。
森山祐哉もりやまゆうやという男に出会うまでは ─

杏は大親友である湊はるかの結婚お披露目パーティにやってきていた。
はるかの夫になった人は人気絶頂中の俳優、有澤佳ありさわけいである。
そのおかげでこのお披露目パーティーには芸能人が多数集まっていた。
杏のお目当てはイケメン芸能人である。
以前よりはるかにイケメン芸能人を食べたい!と宣言していたのだ。
佳とはるかに挨拶を済ませると早々に会場をぐるりと見渡す。
心に響くような男性がいないか物色する。
はるかが呆れたような顔をしていたが杏は気にしない。

「うーん。イケメンだけど、芸能人もいまいち?」

杏のアンテナに引っかかりそうな男性がおらず、ちぇっと呟くと入り口がざわりとざわめく。
その中に一際目立つ存在がいた。
身のこなしが普通ではない。
人にぶつからないようにすり抜けていく姿が杏の目を引いた。
グレーのスーツをきっちりと着こなした男性は柔和そうな笑みを浮かべてすれ違う人に挨拶をしている。
杏は心の中で、あれにきーめたとターゲットをロックオンしたのだった。

「しゃちょーさん。パーティのあと一緒に飲みに行きません?美味しいお酒を出してくれるバーを知っているんです」
「それは魅力的ですがお断りしますよ」
「ええー。どうしてですー?」
「あなたに魅力にとりこにされて食べられてしまいそうだから」
「そんなことしませんよぉ」

あはははと軽く笑いながら杏は内心ちっと舌を打つ。
どんなにアピールしても相手がなびかない。
にっこりと笑みを浮かべて杏を当たり障りのない程度にかわしていくのだ。
芸能人顔負けのイケメンを取り逃がしてなるものかと杏は珍しく必死になった。
目元の笑い皺と八重歯が杏の心を鷲掴みにしている。
今まで付き合ってきた男とは比べ物にならないほどいい男なのだ。
あのスーツの下の体はどうなっているんだろう?
考えれば考えるほど杏の体が燃え上がる。

ドウシテモアレガホシイ ─

欲望に忠実な杏は押してダメなら引いてみろ作戦に出る。
仕方ないとばかりに祐哉に手を振るとはるかの元へと向かった。
退屈そうにしている親友の話し相手をしているとちらりと祐哉の視線を感じたのである。
決して杏を見ていたわけではない。
祐哉の視線の先には佳がいたのだ。
祐哉は佳の事務所の社長である。
自分のところの俳優に目を光らせていてもおかしくはない。
おかしくはないのだが、杏にはそれが気に入らない。
佳がはるかの元へやってくるのが見えて杏は手を振ってはるかのそばを離れた。
今度こそは!と祐哉ターゲットの元へ向かう。
グラマラスなお姉さまや熟年のおばさまたちが祐哉を取り囲んでいたがお構いなしだ。
突撃して祐哉の腕を取るとにっこり笑って、祐哉を取り囲んでいた女性たちにあっかんべーと舌を出したのである。
それを見て、祐哉は大爆笑だ。

「あなたは面白い人だ」
「そう?」
「見た目とは違って随分お転婆なようですね」
「んー。まぁ、それは否定しないっ」

くすくすと笑う祐哉に杏の心臓はどきどきとしぱなっしだった。
もう食べたくて食べたくて仕方がない。
祐哉から香る匂いに杏はうっとりとする。

「ねぇ。しゃちょーさん」
「はい?」
「今夜一晩付き合って?」

ぱちんとウインクすると杏は熱のこもった目で祐哉を見上げる。
冷めたような視線を感じたが杏は首をかしげて誤魔化した。
ダメならその気にさせるまでなのだ。
ね?と可愛らしくおねだりすると祐哉ははぁとため息をついた。

「飲むだけですよ?」
「うんうん。ありがとっ」

にこっと笑った杏は心の中でガッツポーズをする。
二人きりにさえなればこっちのもの。
これがのちに後悔に繋がるなど杏はみじんにも思っていなかった。

 
後悔してももう遅い。

2014/05/12 投稿。


  top


Copyright(c) 2014 yoma_ohkawa all rights reserved.