気持ちいい関係。

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02.くーちゃん、アピールする。


くーちゃんと書いて肉食女子と読む。
美味しい関係。過去拍手小話NO.06くーの受難より。
再録です。
一部内容は変わっています。



パーティーがお開きになったあと、杏は馴染みのバーでゆったりとカクテルを傾けた。
隣には祐哉が座っており同じようにゆったりとグラスを傾けている。
心地よい雰囲気に杏も大満足だ。

「しゃちょーさん」
「ん?」
「私、男の人だーいすきなの」
「は?」

何を突然言い出すんだというような顔をして祐哉は杏を見やった。
杏は訝しげな視線を向けてくる祐哉を見つめ返してふふっと笑う。

「えっち。大好きなの」
「女性がそういうことをあからさまに言うものじゃありませんよ」
「んー。だって気持ちいいこと好きなんだもん」
「初対面の私にそれを言いますか」
「うん。素直に言ったほうがいいかなって。もちろん誰でもいいっていうわけじゃないよー」

くすくすと楽しそうに笑う杏は今にも踊りだしそうな雰囲気だ。
祐哉の顔に手のひらをあてて指先で首筋をくすぐると耳元にふっと息を吹きかけた。

会場あそこにしゃちょーさん以上の人はいなかったなぁ」
「それは複雑ですね。旬の俳優たちが泣いてしまいますよ」
「恰好いいけどねぇ。何かが足りないんだよねぇ」

しみじみと言う杏に祐哉は珍しいものでも見たというような顔で見つめた。
機嫌のいい杏は祐哉の膝の上に乗りあげてちゅうと唇にキスをする。

「ねぇ?一晩だけ楽しも?」
「一晩だけでいいんですか?」
「ん。一晩でいいよぉ」
「今までそう言って一晩で済んだことがありませんので」

祐哉は女性というものを信用していない。
杏もこう言いながらも二度三度と関係を持とうとしてくるに違いないと思っているのだ。
凍りついた視線で杏を見返しても杏はけろっとしている。
祐哉が冷めた目をするのはこういうことかと杏は思う。
杏の中では一度きりと割り切っているが相手はそうではないらしい。
芸能人並にイケメンの祐哉を一度食べられたらそれでいいのだ。
うーんと唸っている杏を見て祐哉は無表情で見返した。

「だってぇ。食べてみたいって思ったのー」
「は?」
「しゃちょーさん食べたいー」
「なにをおっしゃっているのかわかりませんが?」
「食べたら美味しいと思うの」
「はぁ」

気のない返事をして祐哉は脱力した。
食べたいなど今の今まで言われたことがないからだ。
杏の思考は祐哉の考えている斜め上をいっている。

「ちょっとだけ味見させて?」
「ちょっとで済むんですか?」
「食べてみないとわかんなーい」

悪気なく祐哉の膝の上でにこにこ笑う杏に軽いため息をついた。
くすっと笑った杏は首をかしげて祐哉の顔を覗き込む。

「私のお気に入りよりおいしい?」
「はい?」
「私のお気に入り」
「何ですか、それは」
「先週まで付き合ってた人ー」

えへっとのんきに笑う杏に祐哉は眩暈を覚えた。
ここまで明け透けでいいのだろうか?と。
逆に心配になってこのまま放置できなくなってしまった。
さっさと捨て置けばいいと思っていたのだが、放置でもして誰かに持ち帰られても寝覚めが悪い。

「ね?酔っぱらいの言うことだと思って一回だけ」

舌を絡めてキスをしてくる杏の熱さに祐哉は反応してしまう。
堪え性のない自身にちっと舌打ちしそうになったのを飲み込んで祐哉は杏を連れてホテルへと向かった。

 
罠にかけたつもりが…

2014/05/12 投稿。


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