気持ちいい関係。

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05.くーちゃん、口を滑らせる。


くーちゃんと書いて肉食女子と読む。
美味しい関係。過去拍手小話NO.06くーの受難より。
再録です。
一部内容は変わっています。



お披露目パーティーから二週間。
イケなくなった体をどうにかこうにかしつつ杏は日々を過ごしている。
原因がわからずもう一度とお気に入りの彼とセックスをしたのだがあまりのイケなさにストレスは溜まる一方だ。
今まで楽しかったセックスがこんなにも苦痛になるとは思いもしなかったのである。
そんなもどかしい思いも今日で終わりだ。
先週末の合コンでゲットした相手はがっちりとしたガテン系で杏を満足させてくれるだろう。
激しくされればイケるかもしれない!とうきうきしている。
彼に会うまでにはまだ時間があり、杏は上機嫌で鼻歌を歌いながらはるかの家にやってきた。

「やっほーっ」
「くーちゃん、いらっしゃい」

いつもどおりなはるかにほっとする。
結婚をしても変わらない友人は貴重だ。
杏ははるかをとても気に入っている。
杏を理解し、ときには厳しく、ときにはとびっきり優しく接してくれる唯一の人だからだ。
ついついはるかの通常運転に飲み込まれて言う必要もないのに、あの日のことを口滑らせてしまう。

「そういえばねー、すんごかったのっ」
「何が?」
「しゃちょーさん、すんごかった」
「は?」

甘美な一夜を思い出しただけで杏はうっとりとした。
足をもじもじとさせてはぁと甘いを息をつく。
夢現な杏を見て、はるかは顔をしかめた。

「美味しかったなぁ〜」
「え?ほ、本当に食べたの?」
「うんっ」
「くーちゃん、壊れた?」
「壊れてないわよ!失礼な〜」
「夢見てるみたいだから現実に引き戻そうと思って」
「うんうん。あれはもう夢見心地だったよー」

とろんとした杏にはるかは呆れたようにため息をついた。
これはもうダメだ、と手を広げて肩をすくめる。

「今までのえっちがなんだったんだろう」
「はいはい」
「すっごいえっちが上手だったー」
「はいはい」
「あんなに気持ちいいの初めてだったかもー」
「それで?」
「それで?」

はるかが首をかしげると杏も同じようにこてっと首をかしげたのだ。
まさか本当に一回限りなのだろうか?
不安になったはるかは杏の肩をがしっと掴んでがくがくと揺さぶった。

「も、もしかして」
「?」
「それで終わり!?」
「え?そうだよー?なんでぇ?」
「ちょっとそれは」
「そういう約束だったしぃ。やっぱり高嶺の花は高嶺の花なんだよぉ」

えへっと笑う杏にはるかはがくりと肩を落とす。
自分を大事にしてと言いたいが杏も相手を選ぶ。
誰でもいいというわけではないのを知っているからこそ男遊びをしている杏に目を瞑っているのだ。
言うだけ言うと満足したのか杏は時計を見てそわそわとし始めた。

「さーてと。今日はひっさしぶりのでぇとぉー」
「え?」
「新しいカレシできたのー。今日は仲良ししてくるっ」
「いい加減そういうのやめなさいって言ってるでしょう?」
「やっだぁー」

いそいそと鞄からスマホを取り出すと杏が画面をタップしてにまぁと笑ったのだ。
自由奔放な杏にはるかは痛む頭を抱えた。

「今日はね、ご飯食べてぇ、ラブホでえっちかなぁ」

誰もそんなことを聞いていない!と叫びそうになったはるかはぐっと堪える。
叫んだところで杏を煽るだけだ。

「じゃぁね〜」

スキップをしそうな勢いで廊下を歩いていく杏の後姿を見てはるかは盛大なため息をついた。
いつになったら杏は真面目な恋をしてくれるのだろう?
普通に男性と付き合っている姿がどうしても想像できず、はるかはうーんと唸った。


くーちゃん、初めてのことで自覚できなくて怖い。

2014/05/13 投稿。


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