気持ちいい関係。

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   みんな同じ。*2*


にこっと笑った一哉はカフェを指差す。
ほかにも食べるものがあるのに決まっておこさまランチなのだ。

「またぁ?」
「おいちーのっ!」

むっとした一哉に杏は仕方ないなぁと肩をすくめると祐哉を振り返ってカフェでいい?と聞く。
祐哉が頷くのを見て一哉は嬉しそうな顔をして杏の手を引っ張った。
普段、家で食べる食事といえば和食がほとんどで、外出したときくらいにしか洋食を食べることがない。
一哉にとっておこさまランチは出かけたときだけ味わえる贅沢な食べ物なのだ。

「おかーしゃん!いしょぐのっ!」
「急いでも逃げないよ?」
「ないないしゅゆの!」

ぐいぐいと引っ張られて杏も苦笑いする。
小さいころたまに食べるファミリーレストランの料理は杏にとって特別だった。
一哉もあのころの杏と同じ気持ちになっているのだ。
血は争えないなぁと思いつつ杏は一哉に引きずられるようにしてカフェに入っていった。
タイミングよく空きが出てて、一哉と杏季をこども用の椅子に座らせると祐哉と杏も席につく。

「いちと杏季はおこさまランチ。ゆーやは何にするー?」
「カルボナーラかナポリタンか、ラザニアも捨てがたいですね」
「じゃあー、シェアしよー?」
「そうですね」

祐哉と杏はカルボナーラとラザニアのランチセットをオーダーする。
そわそわとしている一哉と杏季の胸元に杏は薄手のタオルを巻いていく。
まだ食事がうまくできない二人はポロポロと食べ物を零すからだ。
ほどなくしてやってきたランチに一哉と杏季は歓喜の声をあげる。
フォークとスプーンを使って一生懸命食べている姿に祐哉と杏は笑みを零した。

「杏季。それちゃんと食べれる?」
「たえ、えぅ」

ぽそっと呟いた杏季は国旗が突き刺さっているオムライスを食べにくそうに食べていた。
口に入る量よりも零している量の方が多い。
スプーンで上手くすくえずぽろぽろと落ちるオムライスに杏季は目に涙を浮かべている。

「食べさせてあげようか?」
「で、きゆ」

頑なな杏季に杏は肩をすくめると杏季の手に手を添わせてフォローをした。
いつもなら杏があーんをさせるのだがせっかく自分で食べると言っているのだ。
少しだけ手を貸してやればそれでいい。
口いっぱいにオムライスを頬張ると杏季はにこぉと笑って杏を見上げた。

「じょーずに食べれたねー」
「あいっ」

嬉しそうにしている杏季はもっかいと杏にせがんでオムライスを口にする。
多少杏の手を借りはしたが一人で食べられたことに杏季は自信を持つ。
祐哉が杏と杏季の様子を微笑ましく見ていると一哉がわざとぽろりとグリンピースをフォークから落としたのが視界の隅に見えた。

「おとーしゃん。とえないっ」
「いーち。ママは見たぞぉ!わざとでしょっ」
「ちあうもんっ!」

一哉はぷくぅと頬を膨らませると祐哉を見上げて、たえしゃしぇちぇ!と駄々をこねる。
杏季と同じように祐哉が一哉の手助けをすると一哉はご機嫌だ。

「ゆーやそっくりかと思ったらところどころに私がいる」
「当たり前でしょう」

がっくりとしている杏に祐哉はくすくすと笑う。
祐哉と杏の血を分けているからこそ、祐哉と杏に似ていて当然なのだ。

「まったく同じなら気持ち悪いだけですよ」
「それもそっか」
「多少似てるくらいがちょうどいいんです。親子ですし」
「そうだよねー」

まったく似てないよりは似ているほうが嬉しい。
どちらか片方ではなく両方に似ていてくれると尚更嬉しくなる。

「ゆーやと私のこどもだしねっ」

杏がぱくっとラザニアを頬張ると一哉と杏季も同じようにオムライスを頬張っていて似たような姿に祐哉はくすくすと笑う。
不思議そうな顔をした一哉と杏季はきょとんとしてスプーンを咥えていた。
正面に座っている杏もフォークを咥えていて似たもの母子を実感する。
俯いて肩を震わせていると杏がんもぅと口を尖らせて拗ねたのだ。

「ゆーやっ!笑うなら笑う!」
「すみません」

笑う祐哉にますます杏はむくれるとぷいっとそっぽを向く。
祐哉が杏の好物であるトマトをフォークに刺すと口元に持っていって食べさせた。
むぅとしていた杏だがトマトを口に入れた瞬間、機嫌よく笑みを浮かべてうっとりとした顔をしたのだ。

「んぅ〜おいちぃ〜」

幸せそうな顔をした杏にほっとして祐哉もサラダに手をつけた。
賑やかなランチを済ませるとアクセサリーショップに戻ってブレスレットの受け取りをする。
その場で一哉と杏季の腕にブレスレットを通すと二人は大喜びしてはしゃいだ。

「あいあと!おとーしゃん、おかーしゃん!」
「あい、あと」

元気いっぱいの一哉と恥ずかしそうにしている杏季。
家族揃って揃いになったことが杏は嬉しかった。

「ゆーや。ありがとね」
「どういたしまして」

よたよたと歩く一哉と杏季は手を繋いで歩いている。
その後ろを祐哉と杏も手を繋いで歩いた。

「お揃いっていいね」
「そうですね」
「家族っていいなぁって思う」

照れくさそう笑う杏の目元に祐哉はキスを落とすと、でも、と呟く。
言いにくそうにしている祐哉の手をぎゅっと握り締めると杏は祐哉を見上げた。

「なに?言ってよー」
「くぅの悪いところが似たら頭が痛くなりそうですね」
「ちょっ」
「事実でしょう?」

祐哉が肩をすくめると杏はむぅと口を尖らせた。
異性関係については杏だけではない祐哉も同罪だ。

「私の場合は仕方なく、ですよ」
「嘘ばっかりぃ」
「嘘ではありませんよ。くぅに出会うまでセックスは苦痛以外のなにものでもありませんでしたから」
「そのわりには気持ちよさそうにしてたけどぉ?」
「生理現象です」

きっぱりと言い切った祐哉に杏はんもぅと抗議する。
今は互いに余所に目を向ける暇もないくらい子育てに忙しいのだ。

「ま。今はくーちゃん一筋だから許してあげる」
「そうしてくださると助かりますよ」
「私もゆーや一筋だからねっ」
「わかっていますよ」

キッと睨んだ杏を正面から捉えて祐哉は無表情で見返す。
どちらからともなく笑みを浮かべるとくすくすと笑い合って唇を寄せた。
ちゅっと軽いキスをすると一哉と杏季が振り返ってくふふと笑ったのだ。

「おとーしゃんとおかーしゃん。ちゅーしちぇう」
「ちゅー、しちぇう」

立ち止まった祐哉と杏のもとへ駆け出すとどん!と抱きついて抱っこ!とねだった。
来た時と同じように祐哉が一哉を、杏が杏季を抱き上げると汐見の待つ家へと帰る。

「同じって幸せ、だね」
「そうですね」

帰る場所も同じ。
誰ひとりとしてバラバラではない。
杏は幸せを噛み締めながら、くふふと笑った。


お揃い家族。
くーちゃんの幸せ。
幸いなことに誰ひとりとして交友関係はくーちゃんに似ることがなかったそうです。
これもひとえに、社長さんと汐見さんのおかげでした。

2014/07/21 投稿。


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