気持ちいい関係。

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ex17.くーちゃん、ドラマを見て悶々とする。


週末の深夜。
こどもたちも寝静まり、ほっと一息つく時間だ。
杏はソファの上で胡坐をかいてクッションを抱き締めたままビールを飲みながらとあるドラマに夢中になっていた。
夫である祐哉の芸能プロダクション一押しの俳優がそのドラマの主役に抜擢されたのだ。
最初はふーんと興味なさげに見ていたのだが、目の前で繰り広げられるシーンに目が釘付けになってドラマの内容そっちのけで見続けている。
真っ白な女性の肌に触れている男性の手があまりにも優しく愛おしそうで、くーちゃんも食べたーーーいが発動するのだ。

「ああんーーーっ。くーちゃんも愛されたーーーいっ」

肌を滑る唇がとにかくエロいのだ。
下手なアダルトビデオよりも興奮する。
杏はクッションを力いっぱい抱き締めて、うーうーと唸って身悶えた。

「あっ!そこでちゅーする?しちゃう!?いやああんっ。さすが女優さんっ。肌きっれーーーっ。くーちゃんも舐めてみたーーーいっ」
「舐めるなら私にしておきなさい」
「えーーーっ。ゆーやなんていつも舐めてるしーーーっ。あの男の子も舐めたいーーー、って、え?」

がばっと後ろを振り返ると呆れた顔をした祐哉が立っていて、やれやれと呟いていた。
いつからいたの!?と杏が叫べば、ドラマが始まってすぐですよと言われて、杏はぷくぅと頬を膨らませる。
だっこぉと甘えて両手を伸ばすと祐哉はひょいと杏を抱き上げてちゅっとキスをした。

「足りないー」
「足りませんか」
「もっとっ」

杏が祐哉の首に腕を回すと噛みつくようなキスを仕掛けた。
はむはむと食んで満足するとぺろりと祐哉の唇を舐めて杏はくふふと笑う。
お返しとばかりに祐哉も杏の唇に噛みついた。

「私以外の男を食べたいとどの口が言いました?」

剣呑な雰囲気を漂わせて祐哉は杏を見下ろしている。
ひくりと口元を引きつらせた杏は祐哉の腕の中でびしっと固まった。

「くぅ?」
「うっ」

張り詰めた空気の中、テレビの中では甘い空気が漂い、濡れ場が映し出されていた。
女性の体を心を労わるようにしっとりと触れている唇に祐哉は少なからずとも嫉妬する。
杏はこの雰囲気にのまれ、舐めてみたいと願ったのだ。
祐哉はテレビをちらりと横目で見つつ杏をソファに降ろすと逃げられないように覆いかぶさった。

「ゆ、ゆーやぁ?」

珍しく不安げな声を零す杏に祐哉はくつくつと笑う。
なにをされるんだろう?と杏の顔に書いてあるのが手に取るようにわかった。

「私以外の男を食べたいと言った罰です」
「えぇぇーーーっ。言っただけなのにぃ」
「言うのも許しません」

にこりと笑った祐哉に杏は唇に指をあてるとうぅんーと唸って首をかしげた。
それならば、祐哉がそう思わせないように杏を愛せば済む話なのである。

「じゃあぁ〜。ゆーやがぁ〜、くーちゃんをー、もっともっと愛して気持ちよくしてぇ?」

口角をあげてにやりと笑った杏に祐哉は目を細める。
何気ない一言ではあるが祐哉にとっては需要な言葉だ。
仰せのままに、と囁くと祐哉は杏を抱いた。
テレビの中の女優よりも魅力的な杏に祐哉は溺れる。
気づけばドラマよりも祐哉と杏のほうが盛り上がり、耳障りな音は余計だと言わんばかりにテレビの電源が落とされた。

「ぁっ、ぁぁっ。ゆ、やぁぁ」
「くぅ。気持ちいいですか?」
「んっ。きもちいーよぉ」

祐哉の腰に杏は足を絡ませて奥まで誘い込む。
動きを制限された祐哉はくっと声を零して杏の腰をぐっと掴んだ。
動かなければ杏の中のうねりにもっていかれる。
奥歯を噛み締めて耐えている祐哉に杏はにんまりと口元を緩めた。
首に腕を巻きつけて祐哉の自由を奪う。

「くぅ」
「んっ」
「申し訳ありませんが、腕を離していただけますか」
「や」
「嫌ではなく」

ふぅと息をついてこれまた珍しく困っている祐哉に杏は気をよくする。
耳元に唇を寄せて食むと杏の中の祐哉がどくりと震えた。

「ぁっ、おっきくなったぁ」
「きついので動きたいのですが」
「動き、た、い?」
「ええ」

少しだけ腕の力を緩めて杏は祐哉の体を撫で始めた。
締まった体にハリのある肌は脱いで見なければわからない。
スーツの下に隠れた体はすばらしいの一言に尽きる。
杏と出会う前はそれなりに女性と関係を持っていた祐哉だ。
祐哉の体を知っている女性は杏以外にもいる。
そう思うと杏の中に眠っている嫉妬の炎が燃え上がった。

─ ゆーやはくーちゃんのもの。
くーちゃんを気持ちよくしてくれるのはゆーやだけ。
ゆーやを気持ちよくしていいのもくーちゃんだけ。 ─

がぶっと唇に噛みついて舌を絡ませると祐哉もそれに答えるように杏の舌に吸いついた。
ちゅぐちゅぐと唇を食む音とぐちゅぐちゅと繋がり合う音が響き合う。

「んんっ、んぅっっっ」

杏は祐哉の首筋に爪を立ててかりっと掻く。
首筋、胸、腰の順番に触れていくと、杏も背中を反らせて祐哉に腰を押しつけた。

「くぅ。あなたは悪い子ですね?」
「ぁっぅ」

祐哉は杏の首筋に歯形を残すほどきつく噛みついた。
赤くなった痕をぺろりと舐めると杏の体が反応してびくりと震えている。
身動きが取れないなら杏を動かすまでだ。
祐哉は体を起こすと向かい合うように座って杏を膝の上に乗せる。

「くぅ?私が動いてはいけないのでしたら、あなたに動いてもらいましょうか」
「い、よぉぉ」

祐哉の肩に手を置くと杏はゆるゆると腰を動かしだした。
ぎしぎしとソファを鳴らしながら杏は嬌声を零す。
祐哉は杏の腰に手をあてたまま片方の手で胸を揉みしだく。
触れていないほうの胸に唇を寄せて舌で転がせば杏の中がぎゅっと締まった。

「ぁ、ぁっ、きもち、いっ。ぁぁっっ、んんっ」
「ああっ。もう、イってしまいそうですよ」
「イ、ってぇぇっ」

祐哉の熱の高まりを感じて杏は祐哉の頭を掻き抱いた。
祐哉も杏の胸に顔を埋めたまま、杏の腰をぐっと掴む。
杏が体を反らせて体を強張らせると締め付けがきつくなり、祐哉は杏の中へ白濁を注ぎ込んだ。
どくんと震えるたびに杏の口からは嬌声が零れ落ちる。

「ぁんっ」

ぴくぴくを震えている杏の下腹部を撫でて祐哉はくすりと笑う。
五人目防止で避妊具をつけてするという誓いはとうの昔に反故されている。
生の気持ちよさの前に杏が負けたのだ。
杏だけのせいにするつもりはないが祐哉も同じである。
できたらできたとき!と胸を張った杏に女性の強さを垣間見たのだ。

「養えないわけでもありませんしね」
「ぅぅん?な、にぃ?」
「いえ。くぅのおかげで毎日が楽しいと思っただけですよ」
「そぉー?」
「ええ」

会話をしているあいだに緩んだ杏の中から自身を引き出すと祐哉はふうと息をつく。
とろんとしている杏の顔を撫でながら祐哉はお風呂に入りましょうかと囁いた。

「う、ん。綺麗に、してくれる?」
「いいですよ。隅々綺麗にして差し上げます」

口元に手をあててくふふと笑っている杏に祐哉も笑みを浮かべて祐哉は起き上がるとバスローブを羽織って杏を抱き上げた。
バスルームでは慣れた手つきで杏の体を洗っていく。
もちろん杏の中に放ったものも綺麗に掻き出して清めた。
敏感な杏の体が反応して困るのもいつものことだ。

「ゆ、やぁ」

シテぇ〜とねだったくる杏の頭を撫でながら祐哉は苦笑する。
少し前までなら欲望のまま、ことに及んでいただろうが今は違う。
せっかく清めた体を汚すことはしない。

「ここでしてしまったら意味がありませんし」
「んぅぅ〜。ゆーやの意地悪ぅ」
「指でして差し上げますから我慢なさい」
「はぁい」

祐哉はバスタブの縁に腰をかけると杏を後ろから抱き締めた。
祐哉の膝の上に大人しく座った杏は足を開くとここと祐哉の手を導く。
くぷっと飲み込まれていく指に満足そうな顔をすると首だけ祐哉を振り返ってキスをねだる。

「んっん」

二本の指で杏の中を掻き乱すとぐちゅぐちゅと音が鳴った。
とりろと流れ出る蜜に祐哉はくすりと笑う。
奥までは指が届かないが、気持ちよくなる場所がいくつかある。
その場所を引っ掻いて、祐哉は杏を絶頂に導いた。

「ぁぁ、ぁっ、ぁぁんっ」

びくびくと体を震わせて果てると杏はくったりと祐哉の胸に倒れ込む。
体を撫でてくる手がドラマの中の俳優を彷彿とさせて、杏の口元はにんまりと笑みをかたどる。

「はぁ。あー。気持ちよかったぁ」
「そうですか」
「うん。ゆーやもしてあげる」
「いえ。私は結構です」
「えー?なんでぇ?」

むぅと頬を膨らませて振り返ると祐哉は苦笑を浮かべていた。
杏の耳元に唇を寄せて、また今度、と囁くと温めの湯に浸かってのんびりとする。
ぼこぼこと柔らかめに立ち上ってくる泡が心地よい。

「ゆーやのー。可愛がってあげたかったのにぃー」

納得がいかないのか杏は唇を尖らせて湯をぱしゃぱしゃと弾いていた。
こどものような仕草に祐哉は杏を後ろから抱き寄せると肩にあごを乗せて仕方のない人ですねぇと呟く。

「また今度、気が済むまで可愛がってくだされば結構ですよ」

気が済むまで、という言葉を聞いて杏の耳がぴくんと反応する。
祐哉が制止しても無視をしてもいいということなのだ。
がばっと後ろを振り返ると杏は膨らませていた頬が嘘のように笑みを広げている。

「くふふ。じゃぁ!じゃあ!次は絶対にするねっ」
「え、ええ」
「いっぱいちゅーってしてあげるね!」
「ほどほどでお願いします」
「ダーメ!くーちゃんの気が済むまでぺろぺろするんだからっ」

ぐっと手を握り締めて気合を入れる杏に祐哉は内心ため息をつく。
普段はなにをするのも、めんどくさぁーいと言ってしたがらない杏が、セックスに関しては妥協をすることがないのだ。
方向性がおかしい、と思いつつもそんな杏を祐哉は愛している。

「使い物にならないように気をつけてください」
「うんっ」

こどものように無邪気な杏の頭を撫でながら祐哉はバスタブの縁に頭を乗せて天井を仰いだ。
目に映るのは青々と茂った緑。
杏が増やしに増やした植物たちだ。
ぼんやりと眺めていると杏が祐哉の顔を覗き込んで、首をかしげている。

「疲れた?」
「少しだけ」
「ゆーやも歳だねぇ」
「そうですよ。歳なんです。少しは労わってください」

んもぅと口にする杏は祐哉の首筋に顔を埋めるとすりすりと甘えていいよぉと囁く。
嫉妬したりされたり、杏と一緒にいるだけで毎日がめまぐるしい。
こんな生活も悪くないな、と祐哉は思うのだった。


相変わらずの二人です。
くーちゃん、気持ちいいことには貪欲。
こどもが育って落ち着いても性欲落ちず。
祐哉の性欲は落ち着いているので、たまーに杏についていけないことも。
そういうときはテクニックを屈指してくーちゃんを満足させるそうですよ?
さすが年の功。


その日のピロートーク。

腕枕をしてもらってほくほくの杏は祐哉の首筋に顔を埋めてくふふと笑っている。
そんな杏の髪を梳きながら祐哉も口元に笑みを浮かべた。

「ねぇねぇ。ゆーや」
「なんでしょう?」
「あの俳優さんさー。どんな子?」

わくわくとして聞いてくる杏に祐哉は眉間にしわを寄せる。
そんな祐哉を見て、杏は眉間に指を伸ばすと、しわ!しわ!と言って伸ばした。

「んー。なんか気になっちゃってぇ〜」
「気にしなくて結構」
「えええ?」

目を丸くする杏に祐哉はため息をつく。
何度言えば学習するのか。
きょとんとして見上げてくる杏の鼻をつまむと嫉妬深い自身に苦笑いする。

「痛いってばぁっ」
「私だけを見ていたらいいんですよ」
「え?見てるけどぉ?」

なに言ってんの、と言いながら杏はつままれた鼻を擦った。
言われた祐哉はまた顔をしかめる。

「愛してるのはゆーやだけだよぉ?くーちゃんとえっちできるのもゆーやだけっ」
「当たり前でしょう。私以外とす、んっ」

むちゅうと祐哉の唇を杏が塞ぐとんもぅと今度は杏が顔をしかめて、それから笑った。
同じ気持ちを抱いている祐哉の体にぎゅっと抱きつくとちゅーと唇を突き出してキスをねだる。
ちゅちゅとキスを交わしているうちに祐哉の気持ちも落ち着いた。

「あのねー。気になったのはねー?」
「はい?」
「また新人くんのときみたいにぃ。ゆーやに迷惑かけてないかなーって」

帰りが遅くなってえっちできないの嫌だもんと言われて祐哉は顔がにやけそうになった。
にやけた顔を見られないように懐深くに抱き締めると大丈夫ですよと囁く。

「できるだけ早く帰ってくるようにします」
「ん。早く帰ってこないと、あのドラマ、見るんだか、んぅ」

杏が最後まで言い切らないうちに祐哉は杏の唇を塞いだ。
見る必要などどこにもない。
ドラマよりもなによりも、祐哉が杏を愛するのだから。

「ドラマよりも私に夢中にさせてみますよ」
「うんっ」

2015/03/08 投稿。


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