気持ちいい関係。

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31.くーちゃん、欲求不満中。


祐哉と杏の本気の恋が始まってからひと月。
日常は旅行前と同じでなにひとつ変わりない。
変わったことがあるすれば杏の左手首にブレスレットがはめられているということだろうか。
所有欲に駆られた祐哉は杏に指輪をしてほしかったのだが、杏が指輪を嫌がったためにブレスレットに落ち着いたのだ。
インカローズとムーンストーンで組み合わされたブレスレットは柔らかい光を放っている。
杏の腕にぴったりとなるように作られたために取り外すことはできない。

「インカローズは永遠の愛を象徴するそうですよ」
「へー」

気のない返事をしながらも杏は手首にはめられたブレスレットを見て笑みを浮かべる。
肌に馴染んだそれは杏のお気に入りとなった。
祐哉の左手首にも杏が贈ったブレスレットがはまっている。
杏は直感でこれとこれと言って選んだのはオニキスと翡翠だった。

「オニキスは魔除けと浮気防止だって」
「それは私ではなく、くぅに必要では?」
「だって祐哉、香水の匂いとタバコの匂いプンプンさせてるもん」
「仕事柄仕方ありませんね」
「だからね。防止っ」

祐哉のブレスレットも同じように取り外すことができない。
シンプルな色で目立たないため祐哉も気に入っている。
直感で選んだわりにはぴったりっと喜んでいるのは杏だけだ。
浮気を疑われるなど祐哉は笑うに笑えない。

「ゆーやは私のだもん」

独占欲を示すようになった杏に祐哉の気持ちも晴れる。
ちゅーと迫ってくる杏の腰を引き寄せると啄むようにキスをして楽しむ。
じゃれあっているうちに気分が高まりベッドにもつれ込んでセックスをするのがここのところのパターンだ。
そうでなくともセックスはしたいときにする!を杏はモットーにしているのである。
祐哉が疲れていようがいまいが関係なく杏が祐哉を誘惑してことに及ぶのだ。
ほぼ毎日体を重ね合わせているため、杏の体は潤っている。

「平日はやっぱものたんないよねぇ」

翌日を考えるとどうしても激しいセックスができず杏は悶々としている。
杏が三度イって祐哉がやっと収まるぐらいだ。
一度しかイかせられないことに杏は唇を噛む。
その分週末は大ハッスルして思う存分快楽を追い求める。
足腰が立たなくなるまで抱かれるのにも随分慣れた。
むしろ足腰が立たなくなるまで抱かれないと欲求不満になるのである。

「ああんー。もう週末まで我慢できなーいっ」

味をしめた杏の体は不思議なことに祐哉以外を求めなくなった。
祐哉基準でものごとを判断してしまうため、だれもかれもが陳腐に見えてしまうのだ。
ゆーやのほうが絶対にいいと思っているあたり、杏は祐哉の罠にまんまとはまっている。
はぁとため息をついて祐哉の下着を握り締めた杏はパンツに顔を埋めてくんくんと匂う。

「ゆーやぁ」

匂っただけでイキそうになっている杏はヘンタイもいいところだ。
帰ってくるまでの我慢っ、と気合を入れなおすと残りの洗濯に手を伸ばして畳み始めた。
祐哉のものを手にするたびに匂いを嗅ぎたくなっている杏はううっと唸る。

「ゆーや欠乏症ぉ」

リビングのテーブルに突っ伏しているとエントランスのインターフォンが鳴った。
祐哉なら絶対に鳴らすことはない。
無視無視と呟いて無視を決め込んでいると杏のスマホが鳴り響いた。


くーちゃん、絶賛欲求不満中。
しゃちょーさんの下着を匂ってやり過ごす。

2014/05/24 投稿。


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