気持ちいい関係。

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くーちゃん、静で遊ぶ。*2*


「お待たせされましたぁ」

さきほどまでの無表情とは一転して杏が笑みを浮かべると祐哉に抱きついてすりすりと甘えているのである。
その姿を見て静は視線を逸らして俯いた。

「ご飯食べにいこー。んでぇ。早くエッチしよっ」
「そうですね」

その言葉を聞いて静は顔を上げて目を大きく見開いた。
さも当たり前のように返事をする祐哉に驚いたのだ。

「今日は何をしてくださるんですか?」
「んぅ〜。お風呂があわあわになるバスボム買ってきたからそれ試すのっ」
「泡風呂ですか」
「うんっ。気持ちよくなろーねっ」
「楽しみにしていますよ」

杏の腰に手を回してがっちり抱き込んでいる祐哉を静は珍しいものを見つけたような目で見つめる。
普段は鬼のように厳しい祐哉が甘い顔をしているのだ。
杏がやってきたときから甘い甘いと思っていたがその比ではない。

「さて。七瀬」
「なんすか」

つい普段通りに返事をすると祐哉の笑みが深まった。
笑みというよりは冷気だ。
凍りついた視線に背筋を伸ばすと静の背中に冷や汗が流れていく。

「何度も言わせないように。言葉遣いはどうしました」
「す、すみませんっ」
「三度目はありません」
「はい!」
「三度目があった場合はわかっていますね?」

くすっと笑った祐哉にこの人だけは絶対に怒らせてはいけないと静の本能が告げる。
こくこくと頷く静を見て祐哉はよろしいと頷く。

「新人くーん。ゆーやに迷惑かけちゃダメだよー。ちゃんと仕事してよねー」
「んなこと言われなくてもわかってるよ!」
「ふぅん」

杏と静のやり取りを見て祐哉は目を細める。
祐哉のいない間に何があったのか。
杏を抱き締めている腕に力を込めると祐哉は無表情で静を見下ろした。

「七瀬」
「はいっ」
「彼女はダメです」

固まってしまった静を見て祐哉は内心舌を打つ。
無意識ではあるがあまりにもわかりやすい反応に苛立ちが募る。
杏が祐哉の袖を引っ張ると首をかしげた。

「なにがダメなのー?はっ!私が変なこと教えるから怒ってるー!?」
「変なことって何ですか」

呆れたような顔をして祐哉が杏を見下ろす。
腕の中でごそごそとする杏はえへっと笑って祐哉を見上げる。
見つめ合っている視線は熱く、今にもことに及びそうな雰囲気だ。

「あのね。新人くんの弱点見つけちゃったぁー」
「はい?」

杏が祐哉の耳元に唇を寄せるとこそこそと話し出す。
耳をくすぐる吐息が甘く静がいなければ杏を押し倒して啼かせていたところだ。

「すごい発見でしょ?」

自慢げに言う杏に祐哉の内心は複雑だ。
静が杏に抱く淡い恋心。
本人はまだ自覚はしていないようだが祐哉はすぐにそのことに気づく。
芽は若いうちに摘んだほうがいい。
どす黒く渦巻く感情が祐哉にそう告げたのだ。

「くぅを愛していいのは私だけです」
「うんっ」

唇を突き出して見上げてくる杏に軽くキスをすると祐哉はくすくすと笑う。
満足した杏は口元に笑みを浮かべて帰ろっと祐哉の手を取った。
見せつけられた静はたまったものではない。

「あ。そーだ。新人くん」

杏が静のほうに振り返ってにやっと笑う。
すぐにふらふらと祐哉の手を離れていく杏を手放さないように祐哉の手は杏の腰にしっかり回っている。

「今度、ゆーやに迷惑かけたら、くーちゃんが許さないからねっ!」
「俺はこどもかっ!」
「こども以下じゃない?駄々こねるなんて」

ねーと笑って祐哉を見上げる杏は無邪気だ。
苦笑いをして祐哉は杏を見下ろすと肩をすくめた。
図星を指された静はテーブルに突っ伏した。

「七瀬。見ている人は見ているものです。気を抜かずに仕事をしっかりとなさい」
「はい。わかり、ました」

いい仕事をした!と杏はドヤ顔だ。
祐哉を見上げてちゅっとキスをすると満足そうに口元をにんまりとさせた。
顔を背けた静の恋心は祐哉の手によって手折られるのだった。

「くぅだけはダメです。渡しません」


しゃちょーさん、牽制中。
寄ってくる虫はばしばし叩き落とすそうです。

2014/05/29 投稿。


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