気持ちいい関係。

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52.くーちゃんと祐哉のバレンタインディナー。


予期せぬバレンタインのプレゼントを玄関に置くと祐哉はカバンから高級チョコレートを取り出して杏に手渡した。
ん?と首をかしげた杏はチョコレートのパッケージを見て目を輝かせる。

「これ!バレンタインのシーズンにしか入らないチョコだよ!」
「ええ。事務所の女性陣から義理でいただきました」
「嬉しいいいいいいい」

チョコレートの箱を掲げると杏はありがたやーと拝んでいる。
ぺりぺりと包装紙を開けて中を見ると小さなチョコレートが三粒。
上品そうなチョコレートに杏の手は震えている。

「どうしよう。ヤバイ。食べれないかもぉ」

目をうるうるとさせうっとりした表情を見た祐哉は苦笑いだ。
ネクタイを緩めながら寝室に行くとラフな格好に着替える。
オフホワイトのセーターとジーンズはここのところの祐哉の普段着の定番だ。
杏も似たような色合いのニットワンピースを着ている。
足は茶色のレッグウォーマーで覆われていて全体的にもこもこと暖かそうだ。
寝室から戻りキッチンを覗くと杏がまだチョコレートを眺めてうっとりとしている。

「くぅ。いい加減になさい。チョコレートはあとで食べればいいでしょう?」
「だってぇ。もったいなくってっ」
「食べなければ意味がありませんよ」
「そーなんだけどぉ」
「欲しければいくらでも買ってあげます」
「んー。今しか食べれないから食べたいだけであってー。いっつも食べてたらありがたみがなくなるっ」

ぐっと手を握り締めて力説する杏の頭を撫でると祐哉は冷蔵庫を開けて汐見の作った食事を取り出し温め始めた。
杏も温めぐらいならと手伝いだ。
温まったハンバーググラタンと温野菜サラダ、コンソメスープにはるか特製のトマトゼリーをダイニングに並べて食事を始める。

「いっただっきまーすっ」
「いただきます」
「んぅぅ〜〜〜。汐見さんの作るハンバーグはおいしーねっ」

どうしてもハンバーググラタンが食べたいと汐見にねだったのは杏だ。
寒いときには熱々のものを食べると幸せな気分になる。
祐哉にもそんな気持ちをおすそ分けしたかったのだ。
はふはふと食べている姿が可愛らしく祐哉の口元に笑みが浮かぶ。

「ゆーや?食べないの?美味しくない?味の濃いもの嫌い?」

矢継ぎ早に聞いてくる杏に祐哉はくつくつと笑う。
むぅと頬を膨らませる杏の頬に手を伸ばして撫でるといいえと答えた。

「食事をしているくぅが可愛かったもので、つい見入ってしまいました」
「ば、ばかーっ!見てないでちゃんと食事してっ」
「食事は美味しいですよ。久しぶりにハンバーグを食べましたし」
「そうだよねー。ゆーやがおこさま料理食べてる姿って想像つかない」

杏は和食が一番好きだがこどもが好むような料理も好物だ。
特にファミレスで食べる食事はご馳走だといまだに思い込んでいる。
母親のボーナスが支給された日は二人仲良く手を繋いでファミレスで贅沢したことを思い出す。
ハンバーグには思い入れがある。
そんなことを思い出しながら杏はもぐもぐと食事を摂った。

「くぅ?」
「んぅ?」
「どうしました?大人しいですね?」

ワイングラスを傾けながら祐哉が首をかしげている。
口の中のものを飲み込むと懐かしい思い出を祐哉に語った。
穏やかな目でそうですかと言われて杏も笑みを浮かべる。

「今度行きましょうか」
「ファミレス?」
「ええ」

杏はファミレスにいる祐哉を想像してぷっと笑う。
浮くだろうなぁと思いながら杏は頷いた。

「ところで、ファミレス行ったことあるの?」
「ありません」
「じゃぁ、初めてだねー」
「そうですね。くぅにお任せしますよ」

その日を心待ちにして杏はハンバーグをぱくりと口に入れたのだった。


というか。
社長さんがファミレスって本当に浮きますよね。
あーでもラフな格好だったら大丈夫か。
オーダーメイドのスーツで行くとアウトー。
バイトの女の子が用もないのに寄ってきそうw
女の子ほいほい。
そしてくーちゃんがあからさまに嫉妬するとか見てみたい。

2014/05/30 投稿。


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