気持ちいい関係。

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57.祐哉、くーちゃんにお返しを渡す。


祐哉が食器の後片づけをしているあいだ杏はテレビを見ながらホワイトチョコのロイヤルミルクティーを飲んでいる。
ほくほく顔でミルクティーを飲んでいる杏を見ていると祐哉の顔にも笑みが浮かぶ。
バレンタインのお返しです、と祐哉が即席に作ったのだ。
カップを手渡されて杏はありがとと素直に喜ぶ。
後片づけをする前にカップケーキを渡してもよかったのだが食べている杏をじっくり見たかった祐哉はその場しのぎでミルクティーを作った。
急いで片づけを済ませると冷蔵庫を開けて箱を取り出しリビングに向かう。
そっと杏に近づくとカップに口をつけている杏の頬に軽くキスをした。

「わっ!びっくりしたぁ」

忍び寄った祐哉を見上げると杏はむぅと頬を膨らます。
くすくすと笑って祐哉は杏の隣に座った。
杏の膝の上に箱を置くとお返しですと耳元で囁く。

「え?さっきもらったよ?お返し」
「本命はこちらです」
「これ?」
「そうです」
「なんかひんやりしてる」

開けていい?と聞いてくる杏に頷くと祐哉は杏の腰を引き寄せて目元に口を寄せた。
杏は甘えてくる祐哉をまるっと無視してリボンを解くと箱を開けて目を輝かせる。
レモンの香りが漂い、杏の食欲を刺激したのだ。

「これ」
「はい。作ってみました」
「ゆーやの手作り!?」
「ええ」
「いつ作ったの?」
「今日です。今日は仕事が午前中までだったので午後からはるか先生のところに」
「あー」

なるほどねーと呟いた杏はカップをひとつ取ると大事そうに掲げて見つめている。
鼻に寄せてふんふんと匂うと美味しそうと呟いた。

「食べていい?」
「どうぞ」

カップケーキの紙型を破ると二層になっていることに驚いて祐哉を見上げる。
にこりと笑った祐哉は杏を見つめ返して作戦成功ですねと言ったのだ。
どこまでも器用な祐哉に嫉妬しそうになるが杏のために作ってくれたということがただただ嬉しかったのである。
ぱくりとかじりつくと爽やかな酸味と甘み、ふわっとしているのにしっとりとした食感に杏は満足した。
もぐもぐと口を動かす杏の口元が緩く弧を描き、笑みを浮かばせたのだ。

「んぅぅ〜おいちぃ〜」
「それはよかった。初めてお菓子を作ったので緊張しました」
「え?初めて作ったの?お菓子」
「ええ。こういったお菓子は初めてです」
「じゃぁ〜ゆーやの初めてをもらっちゃったねーっ」

嬉しそうに笑う杏の頭を撫でると口元についたマフィンのクズを祐哉はぺろりと舐めた。
そのまま軽く口づけをすると薄く開いた唇に舌を差し入れて杏の口内を味見する。
はちみつとレモンの香りに祐哉はくつくつと笑う。

「んんぅ」

食べている途中なのにと杏は視線で祐哉に訴えた。
ちゅっと音を立てて唇を離すと杏は残りのカップケーキをぱくっと慌てて食べている。

「慌てて食べなくてもまだたくさんありますよ」
「わかってるけどっ!ゆーやに悪戯されたら食べられなくなっちゃうっ!」

今食べなくても明日という考えが杏にはないのか必死だ。
二つ目に手を出したとき、さすがに祐哉はストップをかける。
このままでは全部食べ尽くしてしまそうな杏の勢いに呆れたのだ。

「残りは明日になさい」
「えええ〜〜〜。美味しいのにぃ」
「気に入ったというのならいつでも作って差し上げます」

杏から箱を取り上げると冷蔵庫に片づけた。
はるかは本当に杏の好みに合うものを選んだのだ。
二人の関係に嫉妬しつつも杏が喜んでくれたことに安堵する。
口直しの紅茶を持ってリビングに戻ると杏はぷくぅと頬を膨らませてぷいと祐哉から顔を背けた。

「くぅ」
「もうひとつぐらい食べたかったのに」
「夜に食べたら太りますよ」
「うっ」

祐哉は背けた杏の顔を自分のほうに向けさせるとかぷっと唇を食んだ。
んんぅと吐息を漏らす杏は祐哉の首に腕を回して流れに身を任せている。
開いた唇に舌を差し入れようとした瞬間、祐哉のスマホの音楽がけたたましく鳴り始めた。


はるかとくーちゃんの友情の前には祐哉は太刀打ちできない。
そしてお約束の展開b

2014/06/01 投稿。


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