気持ちいい関係。

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65.くーちゃんと祐哉のこれから。


はるかの家にやってきた祐哉に引きずられるようにして帰宅した杏はベッドに押し込められて横になっていた。
捕獲され連れ帰られる車中で妊娠していることを告げるとあれよあれよという間に寝室に放り込まれたのだ。
はぁとため息をつくと祐哉の目を盗んで寝室にやってきた一哉が必死でベッドによじ登っている。
見た目は祐哉そっくりで杏を悶えさせた。

「おかーしゃ」
「一哉ぁ」

ぎゅっと抱きついてくる息子を杏も抱き締めると暖かさにうっとりする。
きゃあとこども特有の高い声で一哉は嬉しそうに笑った。

「ぽんぽ、いちゃい?」
「んー。大丈夫。一哉にまた妹か弟ができるよー」
「ほんちょ?」
「うん。ほんとー」

状況がわかっているのかわかっていないのかいまいち掴めないが喜んでいるならいいかと杏は納得する。
額を合わせて目を合わせると一哉が嬉しそうにちゅーと唇を突き出してくるのだ。
むちゅーとキスを返すと一哉はきゃきゃと声をあげている。

「なにをしていらっしゃるので?」

底冷えするような声で不機嫌さを前面に押し出している祐哉は杏と一哉を冷ややかな視線で見ていた。
ほらすぐにこれだもん、と杏は呟くとあっかんべーと舌を出す。
息子に嫉妬する祐哉に杏は辟易しているのだ。

「一哉とちゅーしてたの」
「ほぅ」
「別にいいでしょー。息子なんだからっ!」

ぎゅっと一哉を抱き締めると一哉に頬ずりをする。
まだ二歳になったばかりの一哉も母親に甘えたい盛りだ。
杏の首に抱きつくとすりすりと甘えているのである。

「一哉。こちらに来なさい」
「やだ。一哉は私の息子だもんっ」
「私の息子でもありますが?」

きょとんとした顔をした一哉は首をかしげるとぴょんとベッドを飛び降りて祐哉に飛びついた。
抱っこ!とねだっているところは誰に似たのやら、である。

「くっ!ゆーやに負けた!」
「日頃の行いが悪いからですよ。くぅは」

一哉を抱き上げると杏のそばまで歩み寄りベッドの端に腰かけた。
顔色の悪い杏の頬を撫でると祐哉は杏の唇にちゅっとキスをする。
一哉も祐哉の真似をしようとするのだが阻止した。

「一哉は杏季にキスをしてきてあげなさい」
「あーたん?」
「そうです。杏季も好きでしょう?」
「あーたん、しちぇくう!」

祐哉の腕から飛び降りると一哉はリビングに行ってしまう。
んもぅと呟くと杏は祐哉の首に腕を回してキスをねだった。
一哉のキスを拭うように祐哉が杏の唇を貪るとほぅと息をつく。

「ゆーやがこんなだと先が思いやられるけどぉ?」
「くぅが唇を許していいのは私だけですよ」
「仕方のないおとーさんだねぇー」

あははと笑う杏を抱き寄せると祐哉は下腹部に手をあててそっと撫でる。
安心しきったように杏が祐哉の胸に体を預けるとはぁぁと息をついて目を閉じた。

「つわり、酷そうですね」
「酷いってもんじゃないよぉ」
「なにか食べたいものは?」
「レモンたべたーい」

三人目にもなると祐哉も勝手がわかっている。
レモンとトマトのサラダを作るべく立ち上がると杏がちょいちょいと手招きをした。

「何です?」
「あのね」

祐哉の耳に唇を寄せて杏は囁く。

「三人目、双子なの」

驚きで目を見開いた祐哉はすぐに笑みを浮かべて杏を抱き締めた。
さすがに今回で子作りはやめようと思っていた矢先のミラクルだ。

「そうですか」
「うん」
「子作りはこれで終わりにしようと思っていたので嬉しい誤算ですね」
「そーなの?あと二、三人は頑張りましょうねって言われるかと思ったー」
「まさか。これ以上、私からくぅを奪われるのは勘弁願いたいです」

苦虫潰したような顔で言う祐哉に杏はぷっと吹き出す。
祐哉は杏の目元にキスをして唇に口づけた。

「子育てが落ち着いたらまた二人で楽しみましょうね」
「うん。子育てが落ち着かなくてもえっちしてよ。ストレス溜まるからっ」
「ええ。望むところです」

顔を見合わせて笑うと祐哉と杏は顔を寄せ合い、啄むようなキスを交わした。
さらに数年後。
祐哉そっくりに成長した一哉に杏がメロメロになり、祐哉が一哉を家からさっさと追い出したのだ。

「ちょっと!ゆーや!酷い!私の一哉なのにぃ!」
「一哉にも修行は必要ですよ」
「変な女にひっかかったらどーすんの!」
「私もくぅにひっかかりましたよ?」
「ゆーやはいいのっ。一哉はダメ。ダメったらダメーーーーー!」
「私というものがありながらよそ見するとは」
「え?」
「いい度胸です。くぅ。今夜は覚悟なさい」
「え?!ちょ、ちょっとま、 ― 「待ちません」
「いやああああ!」

にっこりと笑った祐哉に杏は顔を引きつらせる。
悲鳴をあげた杏はベッドに放り投げられ祐哉にがっつりと貪られたのだった。
歳を重ねてもバカップルな二人の気持ちいい関係は途切れることなく続いている。


そんなわけでくーちゃんとしゃちょーさんのお話はこれで終わり。
あとは番外編が少し残っているくらいです。
5/12から約ひと月。
お付き合いくださいませてありがとうございました!

2014/06/02 投稿。


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