気持ちいい関係。

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   くーちゃん、暇をする。*2*


その日の夜、祐哉が大量の段ボールを持って家に帰ってくると杏はあっと声をあげた。
祐哉の後ろから静がぶすっとした顔をして段ボールを運んでいるのだ。

「素行の悪い言うこと聞かない新人くんだー」
「なっげーよ!」
「だってそのとおりだもーん」

静にじろりと睨まれて杏はあっかんべーと舌を出す。
こどもかよ、と言われて杏がいーっと顔をしかめた。

「小学生だな」
「誰がよ!」
「アンタ」
「アンタだってそうじゃないっ」
「うるせぇ!」

杏と静のやりとりを見ていた祐哉が静の耳を引っ張るとにこりと笑う。
言葉遣いが悪いですね、と囁かれて静はびしりと固まったのだ。

「妊婦をあまり刺激しないでください」
「へ?」

目を丸くした静は杏の腹部をまじまじと見つめる。
視線に気づいた杏はくるりと背中を向けるとえっち!と小さく叫んだ。

「誰がだよ!」
「新人くんっ」
「新人新人うるせーーーーっ!」
「うるさいのはそっちでしょっ!」
「俺はもう新人じゃねえええ!」

まったく、と呟くと祐哉は摘み上げていた静の耳を更に引っ張った。
いてぇぇぇ!と叫ぶ静の耳から手を離すとやれやれと肩をすくめる。
腰に手をあててぷんすかと怒っている杏を手招きすると抱き寄せて落ち着かせるように背中を撫でた。

「興奮するのはよくありません」
「わかってるってばぁ」
「また気持ちが悪くなっても知りませんよ」

ううっと杏が唸って胃のあたりを押さえると顔をしかめている。
ふぅと息をついて落ち着いたところで祐哉は手近にあった段ボールをひと箱開けると中身を取り出して杏に見せた。
段ボールの中は封書とタックシールが詰まっている。

「佳と静のファンクラブのダイレクトメールです」
「すっごい量だねぇー」
「ええ。わが社の稼ぎ頭ですからね。一応」

一応と言われた静の表情は厳しくなる。
まだまだだと言われているような気がして唇を噛みしめた。
そんな静を横目に祐哉は封書を一枚手にするとタックシールを一枚貼ってみせる。

「こうやって封書にシールを貼る仕事をくぅにお任せします」
「ええええええ。カレシさまと新人くんのを私がやるのおお?」
「全部貼り終えたらくぅにはお給料がでます」

お給料!と杏が叫ぶと目を輝かせた。
やるやると段ボールに抱きついて頬ずりしている。
今までアルバイトを雇っていたがちょうど都合がつかなかったというのもあり、杏に仕事を与えることにしたのだ。
どこまででも杏に甘い祐哉であるが、これなら杏の体への負担は少ない。

「うぅ〜〜〜。くーちゃん、頑張っちゃうよおおお」
「頑張らなくてもいいですから、とりあえず月内に貼り終えてください」
「え?そんなのでいいの?明日とかじゃなくて?」
「急ぎませんのでゆっくりどうぞ」
「つまんなーい!もっとじゃんじゃん持ってきていいよぉ」
「ダメです。無理はさせられません」
「けちぃ」

むぅと唇を尖らせている杏の唇に祐哉が軽くキスをすると静は顔を手で覆ってやってらんね、と呟く。
帰りますからね!と叫ぶとどすどすと足音を鳴らせて静は帰宅した。
もちろんマンションの入口には自身のマネージャーが待機している。
決して遊ぶことを許さないマネージャーはどこまでも厳しかった。

「はぁ。俺もカノジョほしい」

その呟きは夜の闇に飲み込まれていったのだった。


続く。

2014/06/12 投稿。


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