気持ちいい関係。

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   くーちゃん、幸せいっぱいになる。*2*


森山家のこどもたちはしつけが行き届いているのか食事を大人しく摂っていた。
汐見のおかげでこどもたちは杏のような好き嫌いもなくいい子に育っている。

「おかーしゃんっ。おしゃかなしゃん、おいちーねっ」

無邪気な一哉の一言に杏が凍りつく。
杏の魚嫌いを知っている汐見はくすくすと笑った。

「う、うん。お、おいしーね。おかーさんの分まで食べて!」
「たえゆーーー!」
「ダメですよ。いちくん。美味しいものは独り占めしてはいけません。お母さんの分を残しておいてあげましょうね?」

汐見に言われて一哉は少し考えるようにして首をかしげるとにこっと笑って頷いた。

「おいちーのおかーしゃんにもあえゆ!」

まさかそう来るとは思わず杏はがっくりとうなだれる。
年の功には勝てるはずもなく、汐見のほうが一枚も二枚も上手だった。
賑やかな食事が終わると歯磨きをさせて一日が終了する。
こどもたちを寝しつけて一息をつくと汐見の勤務終了時間がやってきた。
毎日森山家に来ている汐見は毎週水曜日だけ二十時まで勤務をしている。
杏の精神と体力を考えて汐見が二十時まで勤務してくれているのだ。
汐見はエプロンをカバンに片づけて立ち上がると明日の確認をして玄関に向かった。
杏はそのあとを追いかける。

「今日も一日お疲れ様でしたぁ」
「杏さんもお疲れ様でした」
「いつもありがとねー」
「こちらこそ」
「気をつけて帰ってね」
「はい。おやすみなさい」
「おやすみ〜」

汐見がエレベーターに乗ったのを確認してから杏は家の中に戻る。
こども部屋を覗くと一哉と杏季は気持ちよさそうに眠っていた。
行儀よく眠っている二人に杏はぷぷぷと笑う。
年子の二人は顔つきがよく似ている。
一哉は祐哉に瓜二つだが、杏季も負けてはいない。
女版祐哉なのだ。

「二人ともかーわい」

にまにまと顔を緩めてじーっと一哉と杏季を見つめていると玄関の開く音が聞こえて杏はそっとこども部屋をあとにした。
軽く身支度を整えると杏は玄関に向かう。
四人の母になったとはいえ、女をまだまだ捨てていない。
いつまででも可愛いくーちゃんでいたいのだ。
祐哉を出迎えるとぴょんと飛びついてちゅうと濃厚なキスをした。
笑みを浮かべた祐哉は杏の腰に腕を回すと並んで廊下を歩く。

「ただいま。くぅ」
「おかえりー」
「今日はどんな一日でした?」
「んぅー?いつもと変わらないよー?いちがお風呂上がりにずぶ濡れのまんま走り回って追いかけっこして?掃除が大変だったかなぁ」

祐哉も一哉の悪戯の洗礼を受けている。
杏がキレて、ゆーやが掃除してよね!と指を突きつけられたのだ。
広範囲に撒き散らかされた水たまりに唖然としたのを思い出す。

「一哉のあれは直させないといけませんね」
「まぁ。いいんじゃない?甘えらんなくって甘えさせてっていうサインのような気もするし」
「甘やかすのはよくありませんよ」
「んー。でもいちも甘えたいんだよー」
「走り回るのはかまいませんが、掃除を覚えさせないといけませんね」
「あ。それいいかも。いちもお掃除覚えて一石二鳥」

くふふと笑っている杏の頭を撫でると書斎にカバンを置いて揃ってリビングに向かう。
ネクタイを緩めている祐哉を見て杏はくっと喉を鳴らす。
背後からぎゅっと抱きつくとえっちしよ?と囁いた。

「もう大丈夫なので?」
「うん。先生にもういーよって言われた」
「そうですか」
「五人目、頑張るんですか?て突っ込まれちゃったよぉ」

五人目発言で祐哉は苦笑する。
さすがにもう五人目を作る予定はない。
幸いにも経済的に恵まれてはいるがこれからかかる費用を考えたらため息がでる。
なによりも杏の体力が限界に近づいている以上、無理はさせられないのだ。

「残念ですがこれからはコンドームが必要ですね」

祐哉が肩をすくめると杏が眉を下げてしょぼんとしている。
実際話、杏は生でしようがゴムをしていようが感覚的にはわからない。
ただ祐哉の気持ちよさが半減してしまうのが杏は嫌なのだ。

「ゆーやが気持ちよくないのがイヤなのっ」
「十分気持ちいいですよ」
「ゴムないほうがいいんでしょー?」
「まぁ、ないほうが圧倒的に気持ちいいですけどね」

セックスをするなら気持ちいいほうがいい杏はゴムに抵抗を感じている。
数年前までは絶対にゴムをしなければ安全日であろうがセックスをしなかった杏だ。
この変わりようを以前の恋人(カレシ)たちが知れば驚くだろう。

「今日は、一応、大丈夫、なんだけどー」

どうしても生でしたい杏は上目遣いで祐哉を見上げて誘う。
うるっとした目で見られて感じないわけがない。
祐哉はそこまで枯れてはいない。
そろそろだろうと思い、帰りにコンドームを買って帰ったのは正解だった、と用意周到な自身に苦笑いする。
くしゃりと杏の頭を撫でると祐哉はソファから立ち上がった。

「一緒にお風呂に入りましょうか」


続く。
社長さんもなんだかんだと我慢のできない人。

2014/06/18 投稿。


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