気持ちいい関係。

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ex12.みんな同じ。*1*


杏の膝の上で足をぶらぶらとさせて座っている杏季は杏の左手首をじっと見つめて指を咥えている。
あまり欲求を表に出さない杏季にしては珍しく物欲しそうな目で見ているのだ。

「杏季?」
「あい」
「ほしいの?」
「!」

勢いよく振り返った杏季の目は見開いている。
そんな杏季を見て杏は笑みを浮かべた。
よしよしと頭を撫でると指切りをする。

「パパがおやすみのときに買いに行こっか」
「かっちぇくえうー?」
「うんうん。買ってあげる〜」
「ほんちょ?」
「ホントホント」

ぱぁと顔を輝かせると杏季は杏に抱きついてすりすりと甘えた。
一哉は汐見と買い物に出かけていて、杏季が杏を独り占めするのは久しぶりのことだ。

「まぁまっ」
「んー?」
「ちゅー」

珍しく杏季からキスの催促だ。
嬉しくなった杏は杏季が嫌がるまでキスをして満足そうな顔をしている。
頬にすりすりと擦り寄ると杏季がやぁと声をあげるのだ。

「杏季、かぁわいぃ〜」
「あーたん、かーいっ」
「うんうん」

一哉と汐見が帰宅するまで杏と杏季はスキンシップを楽しんだ。
その週末、杏は双子の世話を汐見に任せると一哉と杏季を連れてショッピングモールに出かけた。
もちろん祐哉も一緒で、一哉を腕に抱き上げて杏の横を歩いている。
こどもを抱き上げた姿もさまになる祐哉に杏はうっとりと見上げた。

「何です?」
「んぅ〜。祐哉ってなにしてもかっこいいよねーっ」
「は?」

ねーっと杏は抱っこしている杏季に笑いかけると杏季も抱っこされて上機嫌なのかにこにこと笑っている。
祐哉は苦笑いをすると肩をすくめて杏の背中にそっと手を添えた。

「くぅも可愛らしいですよ?」
「杏季より?」
「それは困りましたね」

杏と杏季の顔を交互に見て困ったような顔をする祐哉に杏はぷっと吹き出した。
祐哉が杏だけを愛しているのは事実だが、娘の杏季も溺愛している。
変な男が近づこうものなら綺麗な笑みを浮かべて威嚇するのだ。
可愛いのも罪作りだよね、そう思いながら杏はくすくすと笑った。

「くーちゃんも杏季も同じくらい可愛いからねっ」
「おかーしゃんもあーたんもかーいっ!」
「ありがとぉぉっ」

一哉の可愛らしさにちゅっとキスをすると祐哉の顔が曇る。
わかりやすい態度に杏は祐哉の耳元で囁いた。

「ゆーやは、あ、と、で。ね?」

ぱちんとウインクする杏に祐哉はくつくつと笑う。
杏と同じように耳元に唇を寄せて声を沈めて囁いた。

「楽しみにしていますよ。くぅ」

背中をぞくりと震えが走り杏は危うく杏季を落としそうになった。
ぐっと杏季を抱え直すと杏は祐哉を軽く睨む。

「ゆーやの意地悪っ」
「お互いさまですよ」
「なにがっ!?」
「内緒です」

にっこりと笑うと祐哉は立ち止まってしまった杏の背中を押して歩き出す。
可愛らしく夜の誘いをしてくる杏に少なからずとも祐哉は落とされそうになったのだ。
今すぐにでも回れ右をして寝室にこもりたい気分になったとは口に出しにくい。
言えば言ったで杏が大喜びしてベッドにダイブするのは目に見えている。
教えてよ!と騒ぐ杏の腰をひと撫でするとひゃあ!と悲鳴があがった。
ぷくぅと頬を膨らませて怒っている杏に目を細めると祐哉は杏の耳元に唇を寄せてこどもたちに聞こえないように囁いた。

「帰ったら教えて差し上げますから機嫌を直してください」

はぁいと不貞腐れたように言う杏に祐哉はくすくすと笑うと目当てのアクセサリーショップに入っていく。
祐哉は杏と杏季のブレスレットを見立てるために一哉を抱えたまま店内を見渡した。
杏季とお揃いがいいと杏にリクエストされて、どうしたものかと考えを巡らす。
杏のイメージと杏季のイメージは違いすぎる。
その二人がお揃いでつけても違和感がないものを選ばなければならないのだ。
一哉も興味津々できょろきょろと周りを見渡していた。

「おとーしゃん。こえはー」

一哉が指差したのはラリマーだった。
柔らかな色合いは物静かでおっとりとした杏季にはぴったりだ。
人見知りも緩和されるかもしれない。
杏にいたっては少し落ち着くかもしれない。
そんなことを考えていると一哉はこえーこえー!と騒ぐ。
騒ぐ一哉の頭を撫でると祐哉は苦笑いする。

「こえがいーっ」
「そうですね。これにしましょうか」

一哉が気にいった石を手にすると祐哉は店員を呼んでブレスレットのオーダーをする。
杏季を抱っこして椅子に腰掛けていた杏はあっと声をあげると祐哉に声をかけた。

「ゆーや。せっかくだからいちのもよろしくね」
「一哉もですか?」
「うん。仲間はずれよくなーいっ」
「それなら基哉(もとや)と祐菜(ゆうな)にも買って帰らないといけませんね」
「もととゆーなはいいよ。まだ赤ちゃんだもん。もうちょっと大きくなってから」

下手に石を飲み込みでもしたら大変だ。
それもあって今回は杏と杏季、一哉のブレスレットを購入するに留めた。

「ゆーや。いちと杏季のはゴムにしてもらってねー」
「わかっていますよ」

日に日に大きくなっているこどもたちに外れないようなブレスレットは危険だ。
取り外しができるタイプにしておかなければなにが起こるかわからない。
出来上がりまで一時間ほどかかると告げられ、祐哉と杏は一哉と杏季を連れて買い物に出る。
今度は祐哉が杏季を抱き上げて杏と一哉は手を繋いで歩いた。

「お腹減ったねー」
「しゅいちゃ!」
「なに食べよー?」
「おこしゃまらんちぃ!」


続く。

な、なんと!100話目でしたー。

2014/07/21 投稿。


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